『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
「社長……響さんの御父様は普段ご自宅にいらっしゃるのですか?」
「ん~、うちもゴルフとか付き合いがある時は不在だけど、基本自宅に仲のいい友人呼んで囲碁とか将棋してるかな」
「囲碁と将棋ですか?」
「ん。アクティブに動くのは苦手だと思う」
「何となく想像が付きます。落ち着いた感じのイメージですし、物腰がとっても優しい御父様という感じです」
「そう?」
「はい、いつも羨ましく思います。あんな風に優しい眼差しを両親から向けられたことがないので」
「……そんな事ないでしょ」
「いえ、……本当の話です」
「………まぁ、俺が要れば十分でしょ。仁科の嫁になったら、うちの親父が可愛がってくれるよ」
「っ……、ご冗談は止めて下さい」
「俺本気だって言ってるじゃん、何度も」
「………」
視線を逸らした芽依。
この手の話題は完全にスルーするつもりなのだろう。
「数日前に」
「……はい」
「親父に話したから」
「……何をですか?」
「芽依と結婚したいからって」
「はっ?!」
「冗談抜きで、ちゃんと親には報告したから」
「っ……、それで、社長は何と……?」
「芽依のご両親が許可してくれたら、いいって」
「はい?……社長がそう仰ったんですか?!」
「ん」
「うそっ……」
「俺がずっと芽依のこと好きなのも知ってるし、そもそも秘書に採用したのもちゃんと許可得てるしね」
「ッ?!!」
「だから、早ければ明日?いや、今夜がいいか。……芽依のご両親にご挨拶に行きたいんだけど」
「はいぃぃぃ~~~っ?!!」
助手席に座る彼女が、体の向きを変えるほど驚愕した。