『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす

お蕎麦屋さんを後にした私達は大型ショッピングモールで買い物をして、彼の家へと行くことになった。

会話の中で『クリスマスツリーって、一人で飾って一人で楽しむの、寂しくない?』という流れになって……。
学生時代は友人数人呼んで飾り付けて、クリスマスパーティーをしたらしいんだけど、周りが結婚ラッシュになり、パーティー自体も少なくなったとか。
『二人でなら、楽しめそうだよね?』と言われたら、断れない。

クリスマスパーティーをするわけではなくて、一先ず、飾り付けをしようという事になった。
そして、そのついでに私が夕食を作ることに。

彼のリクエストで夕食は『シチューハンバーグ』。

彼の家のキッチンに立ち、食材を調理台に乗せてふと思う。
これって、本当に『恋人』みたいじゃない?

急に不安に襲われる。
まだそれらしい雰囲気にはなっていないけれど、先のことは分からない。
万が一、雰囲気に呑まれて……しまったら大変だ。

秘書としての仕事を失ってしまう。
それ以前に、彼の傍にいられなくなってしまう。

ダメダメ。
しっかりしなくちゃ。
大好きだけど、好きにはなってはいけない人なんだから。

「お水、頂いてもいいですか?」
「ん~、気にしないであるものなら何でも好きなだけどーぞー」

リビングにクリスマスツリーを組み立てている彼。
鼻歌交じりに飾り付けをしている。



ビーフシチューハンバーグ、きのことかぼちゃのホットサラダ、コンソメスープ、キッシュ・ロレーヌ。
食パンを代用してキッシュを主食にし、簡単なサラダと手軽に作れるコンソメスープ。
そして、ビーフシチュー好きな彼のためにハンバーグも作って……。

< 82 / 194 >

この作品をシェア

pagetop