うた×バト〜思いは歌声にのせて〜

理解者たち

「流歌、行くぞ」

 一通り自己紹介が終わって解散となったプレイヤー志望の集まり。
 みじめでいたたまれなくて、私はずっとうつむいてた。

 そんな私に雄翔くんが声を掛けてくれる。
 足が重くて動けそうになかったから助かったし、ホッとする。
 でも、雄翔くんに頼りきりになっている自分が情けないとも思っちゃう。

 大好きで、大切な相手だから迷惑かけたくないって思ったの。

「雄翔くん……ごめんね」
「謝らなくていいよ。とにかく、ちょっと落ち着けるとこ行こう」

 ゆっくり立ち上がった私の手を取って、雄翔くんは第二会議室から連れ出してくれる。

「っ……」

 手、繋いでくれてる。

 こんなときだっていうのに雄翔くんの体温を感じる手に意識が集中しちゃった。
 私より硬い、男の子の手。
 落ち込んでるっていうのに、私の心は現金にも早鐘を打つ。

 大好きな人に触れて貰えて、ドキドキ駆け足になる鼓動。
 同時に胸に宿った温かさが、私の落ち込んだ気持ちをちょっと上向かせてくれる。

 悔しくて、みじめで、息苦しかったさっきまでの私。
 雄翔くんのおかげで、呼吸が楽になった。
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