うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
 広い屋上には人工芝が敷き詰められていて、強くなってきた日差しがその緑色を鮮明に照らす。
 ところどころにベンチと日よけのパラソルがあって、生徒たちが休憩できるような環境が整っていた。

 何より屋上がダメっていう一番の理由である囲いのフェンス。
 ここのはフェンスというよりほぼ壁だった。
 屋根のない最上階って言った方がいいかもしれない。

 これならフェンスを乗り越えようとか、劣化に気づかず壊れて事故にってこともなさそう。
 まあ、たった四年でそこまで劣化してたら逆に問題だろうけど。

「ほら、大丈夫だろ?」

 得意げに笑った雄翔くんはカッコ良いけど、年相応のかわいさもあってキュンとした。
 太陽の光で照らされた黒髪はいつもより青みが強い。
 暗い色合いなのに、その笑顔もあってキラキラと輝いて見えた。

 雄翔くんは私を導いてくれる星みたい。
 この星の光を意味する名前の学園で、私が目指すもの。
 最初はただの憧れだったけど、いつの間にかもっと近くに行きたいと思った。
 今は近づきたいだけじゃなくて、その隣に行きたいって思ってる。

「うん、そうだね」

 見上げれば青空が広がるこの屋上は、さっきまでの落ち込んだ気分を晴らしてくれる。
 もっと頑張りたいって、自然と思えるようになった。
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