うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
 わ、私と雄翔くんが付き合ってる?
 それって、その……恋人同士って意味だよね?

 藤子ちゃんのニヤニヤした表情を見れば間違っていないと思う。
 でも、私と雄翔くんが……なんてっ!

「つ、つつ付き合ってないよ⁉」
「あ、どもってる。あやしいなぁ」

 千代ちゃんもニヤニヤしだして、私は助けを求めるように千絵ちゃんを見た。
 でも。

「うーん。お似合いだとは思うけど……雄翔くんに流歌を取られたみたいな気分になっちゃうな」
「だから付き合ってないからぁ!」

 いつかは彼女になれれば嬉しいなとは思ってるけど、付き合ってないのにここまでからかわれるなんて……。

「あはは、ごめんごめん」
「ちょっとからかい過ぎちゃったかー」

 藤子ちゃんと千代ちゃんが笑いながら謝ってくる。
 でもそれ、本気で悪いと思ってないよね⁉

「むぅー」

 私は子供っぽいと思いつつ、頬を膨らませて不満をうったえた。

「いや流歌、それかわいいだけだから」

 そこに千絵ちゃんの冷静なツッコミが入る。

 でもそのかわいいって、小さな子供みたいでって意味でしょう?
 全然嬉しくないんだけど!

 結局不満顔はそのままだったけれど、それが逆に三人のツボに入ったみたい。
 ずっと楽しそうに笑うから、私もつられて笑い出しちゃった。

「ふふっ、もう……みんな笑わないでよー」

 なんだかんだで笑顔の私たち。

 過去のことを話して、克服出来るように手伝ってって頼んだ。
 拒否される可能性も全くないわけじゃなかったから不安だったけれど、みんなは協力するって言ってくれた。
 それが、とても嬉しい。

 ありがとう。

 私はみんなと笑いながら、心の中でもう一度感謝の言葉を繰り返した。
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