うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
「無理じゃないよ! 雄翔くんとここでお話出来るの、私好きだし!」

 思わず身を乗り出してOKすると、雄翔くんの顔がほころんだ。
 年相応の、かわいくて優しい笑顔。
 多分、私だけに見せてくれる笑顔。

「っ!」
「ありがと、俺も流歌と二人きりで話せるこの時間が好きだよ」
「っ! っ! っ!」

 破壊力たっぷりな笑顔と言葉に、私はしばらく呼吸の仕方を忘れた。

 時々こんな風に雄翔くんにノックダウンさせられそうになる。
 その度に勘違いしそうになるから困っちゃうんだ。

 雄翔くんにとって、私は特別な女の子なんじゃないかって。


 夜も、どんなに遅くなっても【おやすみ】のメッセージだけはしてくれる。
 教室ではあまり話せないけれど、何かと気にかけてくれる。

 ここまで来ると本当に期待したくなっちゃって困るよ……。

 でも、困るけど……やっぱりどうしようもなく嬉しいんだ。


 そんな風に過ごすうちに、学園全体が学期末トーナメントに向けて動き始める。
 訓練ルームも予約が取りづらい状態になって、なかなか実戦の練習が出来ない。

 そんな状況で、やっと予約が取れたときのことだ。
< 116 / 181 >

この作品をシェア

pagetop