うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
「……分かってますよ」

 絞り出すように答えた雄翔くんは、眉間にしわを一本刻みながらうどんを食べた。


 藤原先輩の言いたいことは分かる。
 私も直接何かを言われたことはないけれど、雄翔くんと一緒にいるときに不満そうな視線を向けられたことがあった。
 良く思われてないっていうのは感じてたから。

 多分今は学期末トーナメントにみんな集中してるから騒ぎ立てないだけ。

 大好きな雄翔くんと一緒にいられるのは嬉しいけれど、ずっと今の状態でいるわけにはいかないよね。
 ファンも減っちゃうだろうし、雄翔くんの迷惑になっちゃう。

 とりあえず、横山くんのことはトーナメントが終わるころには何とかしないとね。

「なんにせよ陽向を落ち着かせないとだな。まあ、俺からも言っとくよ」

 私の決意を後押しするように、中島先輩が可愛い顔でニカッと笑う。
 見た目だけなら年下に見える中島先輩だけれど、やっぱり最年長。
 こういうときは頼りになりそうだなって思った。


 そんな風に色々と問題もあるけれど、着々と学期末トーナメントは近づいて来る。

 人前で歌えるようになる特訓も成果を見せ始める中、千代ちゃんたちが作ってくれた創作歌を試したりと学期末トーナメントの準備を進めていた。


 そんな、学期末トーナメントもあと一週間と差し迫ったある日。
 重大発表があるということで全生徒が講堂に集められた。
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