うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
『見ての通り、今までのような顔のない人形ではない。これは“ハコ”の中にいる人物をスキャンしてバトルフィールドに投影した姿だ』

「ってことはつまり、“ハコ”の中の姿がまんまバトルフィールドに映し出されるってことか」

 近くにいた男子生徒の声が聞こえた。
 信じたくなくても、信じるしかない状況。

 “ハコ”の中の姿がまんまバトルフィールドに映し出される。

 スクリーンに映っている“ヒトガタ”たちはヘッドホンとゴーグルをつけてはいないから、つけていない状態が投影されているんだと思う。
 つまり、私の髪と目の色がみんなに知られちゃうってことだ。

 あくまで“ハコ”の中にいる状態だから、多分歌うことは出来る。

 でも、私の髪色を知られたら目立つに決まってる。
 こんなふうに巨大スクリーンに映し出されるんだからなおさら。

 《シング・バトル》を終えて“ハコ”の外に出たときの反応が今から怖いと思った。


『校内の施設も順次新バージョンのものに変えていく。本当は学期末トーナメントに間に合うようにしたかったが、全てを差し替えるには時間が足りないため、今回はデモンストレーションと決勝戦のみに採用することになった』

「マジか! 学期末トーナメントの準決勝からは芸能事務所とかスポンサーになってくれるような企業のお偉いさんも見に来るんだろ⁉ 決勝戦まで残れば確実に顔も売れるってことじゃん!」

 またさっきの男子生徒の嬉しそうな声が聞こえる。
 彼だけじゃなく、ほとんどの生徒は決勝まで残るぞ!って盛り上がってるみたい。

 どうしよう、なんて思っているのは多分私だけだろうな。
 嫌な感じに早くなる鼓動を抑えながら、私はスクリーンを見続けていた。
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