うた×バト〜思いは歌声にのせて〜

大事で、大切で。

 《シング・バトル》の“ヒトガタ”仕様変更のことで私を心配してくれたのは雄翔くんもだったみたい。
 翌朝の東屋で真っ先に聞かれた。

「流歌、目立つの苦手なんだよな? 大丈夫か?」

 放課後や夜のメッセージでは忙しさもあってちゃんと聞けなかったから、と言った雄翔くんはどうしてか申し訳なさそうな顔をする。

「大丈夫だよ。素顔をさらすことになっても、優勝を目指すって決めたから」

 雄翔くんの沈んだ顔を見ていたくなかった私は、ことさら明るくみんなに背中を押してもらった話をした。
 優しく微笑んで聞いてくれた雄翔くんだったけれど、話が終わっても心配そうな様子は変わらない。

「……でもさ、決勝まで行けて新しいバージョンの《シング・バトル》をした後。目立つのは変わらないよな? 目立つのに慣れる特訓とかしてるヒマないだろうし……」
「……」

 実は目を逸らしていた部分を指摘されて言葉を続けられなくなった。

 頑張りたくてみんなに背中を押してもらった。
 でも、《シング・バトル》を終えた後注目を浴びるだろうってところは考えない様にしてたんだ。
 それを考えたら進む足を止めちゃいそうで……。

「やっぱりそこは不安なんだな?」

 押し黙った私を見て図星だって判断したのか、確認するように聞いて来る雄翔くん。
 その質問に答えられないでいると、「大丈夫」って優しく響く声がかけられた。
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