うた×バト〜思いは歌声にのせて〜

月の化身【雄翔side】

 感動。

 そんな言葉しか思いつかなかった。

 何度も聞いた流歌の歌。
 優しい癒すような彼女の歌声。

 でも、今回はもっと強い感情が歌声に込められていて胸が熱くなった。
 心に直接届くような歌声に、不覚にも泣きそうになる。

 俺の隣にいる陽向はガマン出来ずにボロボロ涙をこぼしてるけど。

 流歌の姿が新バージョンのフィールドに“ヒトガタ”として現れて、いつかの月姫だって気づいた陽向。

「雄翔! お前もしかしなくても最初から知ってたんだな⁉」

 ってうるさかったけど、今は瞬きもせずにスクリーンに見入っていた。

 でも見入ってしまうのは分かる。
 俺もそうだから。

 金兎にメタモルフォーゼした流歌の“うたアニ”。
 それと共に変わった彼女の衣装はまるで女神みたいで……。

 ただただ、キレイだって思った。

 そのまま大逆転勝利を収めた流歌に大歓声が上がる。

「すごいよ、流歌……でも」

 歓声にかき消された俺のつぶやきは誰も聞いていない。
 つぶやきと一緒に強張った表情も、誰も見ていない。
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