うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
 流歌はすごい。
 俺の好きな、誰よりも大事な女の子はすごいだろうって自慢したいくらい。
 でも、思った以上に彼女に注目する周囲を見て不安が高まった。

「あの金髪の子は何者だ⁉」
「ぜひうちの事務所に来てもらいたい」

 そんな声がたくさん聞こえる。
 これほどの注目、俺一人が盾になっただけで守れるのか?

 何があっても守る気持ちはある。
 でも、確実に守れるかと言われたら自信を持ってYesとは言えない。

「あの子があんたたちの言っていた子ね?……いいじゃない」
「っ⁉」

 俺が不安に思っていると、いつの間に近くに来たのか社長が後ろに立っていた。
 女言葉だけれど、見た目はマッチョな紳士だ。
 初めて会ったときは俺が八歳くらいの頃だったこともあって逃げ出したくなったっけ。

 そんな社長がいつの間にか背後に立ってたんだ。
 《S-JIN》としてよく会っているとはいえ、驚かないなんて無理な話。

「どぉわっ⁉ しゃ、社長⁉」
「ビックリした! いきなり背後に立たないでくださいよ!」
「……驚いた」

 陽向、大地先輩、翼先輩も驚きの声を上げる。
 でも社長は俺たちの反応なんか気にも留めずにスクリーンをじっと見つめてた。

 これは、かなり流歌を気に入ったと見ていいと思う。

 流歌に関しては大地先輩が月姫として社長に報告していたはずだ。
 その後で、俺も報告――っていうか、相談してたんだ。

 ……好きな子が出来たからって。
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