うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
 流歌のことを気に入った様子の社長なら、力を貸してくれるかもしれない。
 そう思った俺はなりふり構わず社長に頼んだ。

「社長! 流歌は目立つのが苦手なんです。克服しようと頑張ってるけど、今はまだ平気だとまでは言えなくて!」

 いまだ続く歓声に負けないように社長に言葉を伝える。
 ちゃんと伝えられないような願いなんて、この厳しい社長は叶えてくれないだろうから。

「俺、流歌を守りたい! 力を貸して欲しいです!」

 俺の言葉を聞いた社長はニヤリと笑う。
 厳しくても良い人であることは確かなのに、その笑い方はちょっと怖かった。

 でも、俺の願いは聞き届けてくれたみたいだ。

「OK! 良いわよ。ちょうど良いイメージが湧いてきたところなのよ。……大地!」
「え? 俺? 何っすか⁉」
「あんたは絢ちゃんを連れて来なさい。雄翔は流歌ちゃんをね」

 楽しそうに指示を出す社長には何が見えてるのか。
 ちょっと不安はあるけど、俺の願いにOKと言ったからには流歌を守るために動いてくれるはずだ。

 だから、俺たちは社長の指示するままに動いた。
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