うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
エピローグ
「え⁉ 雄翔くん⁉」

 《シング・バトル》が終わって“ハコ”から出ると、目の前に雄翔くんがいた。
 観覧席にいると思っていた雄翔くんがいてビックリする私に、彼は近づいて私の手を取る。

「流歌、まずは優勝おめでとう」
「え? あ、ありがとう」

 いきなり握られた手と間近にある大好きな人の顔にドキドキと胸が高鳴る。
 勝利の余韻と重なって、胸がいっぱいになった。

 でも、雄翔くんは優しい笑顔を少し困ったものに変える。

「このままいっぱい祝ってやりたいんだけど、それはまた後で。今はちょっとついて来てくれ」
「へ?」

 急いでいるのか、そのまま私の手を引く雄翔くん。
 戸惑うけれど、雄翔くんが私の嫌がることをするわけないから素直について行く。
 歩きながら、雄翔くんは状況を簡単に説明してくれた。

「メタモルフォーゼ成功したときの流歌はすごかったよ。とってもキレイで、見惚れた」
「あ、ありがとう」

 褒められて、雄翔くんからキレイって言われて、とっても嬉しい。
 でも、その後の話のせいで嬉しさにひたっていられなかった。

「でもさ、それは俺だけじゃなくてみんな思ったみたいで……簡潔に言うと、今流歌は色んな企業や事務所から狙われてる」
「へ? ね、狙われてる⁉」

 言い方が物騒だったから驚いた。
 しかも企業や事務所がって、大げさなんじゃ……。
 でも雄翔くんの話では、事実色んな企業がスポンサーにと名乗りをあげ、色んな事務所がウチと契約を! という状態なんだとか。
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