うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
「やっぱり翼先輩も狙ってるんじゃないっすか。……いいっすよ、俺絶対負けないっすから!」
「まあ、月の女神のようなあの子が彼女ってのは悪い気がしないからな。……俺だって負けるつもりで“勝負”なんて言わないよ」

 かみつく陽向に、翼先輩は受けて立つとでも言いそうに笑みを浮かべる。
 そして視線を俺に向けた。

「で、雄翔は?」
「え?」
「雄翔はこの勝負、参加するの?」
「っ! しますよ!」

 思わず、叫んでいた。
 流歌のことが好きかどうか、それはまだよくわからなかったけど。
 でも、取られたくないって思ったから参加すると言ってしまったんだ。

 告白とか交際を申し込むとか、するかどうかは分からないけど。
 でもとにかく、この二人には見つからない様に流歌を隠し通そうって思った。

「はぁ……お前らさっき社長に女の子に注意するよう言われたばっかりだってのに……」

 呆れた様子の大地先輩。
 大地先輩は他に好きな子がいるらしいからか、流歌のことをそこまで気にしてないみたいだ。
 そのことにちょっとホッとする。

 呆れて、困ったような苦笑いを浮かべた大地先輩は「とりあえず社長には報告案件だな」、と呟いた。
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