ひねくれ令嬢の婚活事情

「ヴェルネ家の方に見初めていただいたようね」

 早速叔母から舞踏会での様子を聞き出したらしい。母は珍しく猫撫で声でオレリアの肩に手を置いた。その後に続く言葉は、容易に想像ができる。

「よくやったわ、オレリア。彼ならば我がスミュール家にも相応しいというものよ」

 母は未だにこのスミュール家を誇り高い貴族であるという妄執に取り憑かれている。父と不仲だった母は、大貴族の女主人であるという一点だけに自分の存在価値を見出していたからだ。

 マティアスの生家は伯爵家であるものの、資産や宮廷での発言力はスミュール家を上回っている。三男であれど、没落寸前の侯爵家の人間が下に見ていい存在ではない。

 だが、母の思い込みを否定したところで、ヒステリックに喚くだけだろう。

「ヴェルネの息子が婿に来れば、貴女がこのスミュール家を継ぐことができるのです。あの男からこの家を取り戻すのよ」

 オレリアの肩を掴む母の手に力が篭る。母は憎しみをたたえた目で前を見据えていた。その瞳の中にオレリアは映っていない。母にとって、オレリアはいつだって彼女をこの家に繋ぎ止める道具だった。オレリアが結婚を急いでいるのも、叔父から家督を取り戻すためだと思い込んでいる。

 オレリアは幻想に囚われる哀れな母の姿を鏡越しにただ見つめた。

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