ひねくれ令嬢の婚活事情

薔薇の園にて


 王宮の舞踏会から二週間後。
 オレリアは叔父夫婦と共にとある伯爵家のガーデンパーティへ赴いていた。伯爵夫人自慢のバラ園の開花に合わせて開かれるそれを、オレリアは密かに楽しみにしていた。


 叔母について一通り挨拶をした後は社交の輪からそっと抜け出し、庭を見て回ることにした。
 瑞々しい緑の葉を付けた木々は美しく整えられ、花壇には鮮やかなバラとそれを引き立てるような可愛らしい小花が色とりどりに咲いている。

 伯爵夫人によると、庭園の奥には隣国から持ち込まれたばかりの新種のバラもあるらしい。オレリアはゆっくりとした足取りで花壇を眺めながら歩いていた。


 そこへ足音が近づいてくる。
 ふと顔を上げ足を止めると、まだあどけない顔立ちのご令嬢と目が合った。彼女は主催の伯爵家の娘だ。名はソフィーといった筈だ。

「オレリア様、我が家のバラ園はいかがですか?」

 彼女はなぜかやや強張った面持ちでオレリアへそう尋ねてくる。そして、近くにいた使用人へ飲み物を運ばせ、オレリアも勧められるままにグラスを受け取った。

「ええ。どれも見事に咲いていて、とても素晴らしいですわ」
「それはよかったです。母も喜びます」

 そうは言うものの、ソフィーの顔はどこか浮かない。本題が別にあることは見て取れるが、親同士ならまだしもオレリアとソフィーに接点はまるでなく、彼女が何を話したいのか皆目見当もつかない。
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