ひねくれ令嬢の婚活事情
そこでふと、思い至った。
マティアスがオレリアと結婚し、もしも叔父から家督を奪ったとしたら、スミュール侯爵はマティアスとなる。それはオレリアと離縁をした後も覆ることはない。勿論、一定期間の婚姻期間の継続と貴族院の承認が必要となるが、社会的な信頼もあるマティアスにとってはどちらも妨げにはならないだろう。
侯爵家の当主ともなれば、王女の降嫁先としても十分。結婚歴に疵はつくが、国王は末娘のリリアーヌに甘いと聞くし、それは大した問題ではないのかもしれない。
我ながら嫌な考えだと思う。けれども、仲睦まじく踊る二人を見ていると、どうにも冷静な思考を取り戻せない。自分は一体どうしてしまったのだろう。
「ソフィー嬢、私から貴女に語ることは何もございませんわ。失礼いたします」
オレリアは手短にそう言い、ダンスホールの中央から背を向けた。夜風でも浴びて、暴走気味の思考回路を落ち着けたかった。