ひねくれ令嬢の婚活事情
「オレリア!」
声の方を振り返ると、ガゼポから数歩離れた先で、マティアスが膝に手をつき、乱れた息を整えていた。
オレリアはその様子を現実とは思えず、呆然と眺めていた。
「あの、何をしているんです……?」
おずおず問いかけると、マティアスは鋭い目つきで威嚇するようにオレリアを睨みつける。そんな目を向けられるのは初めてで、オレリアは思わずたじろいだ。
そして、マティアスは身を起こし大股でオレリアの元へ近づき、その隣へどさりと腰を下ろした。いつになく乱雑な仕草に戸惑いが隠せない。固まっていると、横から腕を引かれオレリアも長椅子に再び腰掛ける。それでも彼の顔を見ることは躊躇われ、オレリアは自分の膝頭に視点を合わせた。
「何って、君が大広間にいないからずっと探していたんだよ」
「…………リリアーヌ殿下はよろしいのですか?」
「彼女なら、一曲だけ付き合うって約束だったから、約束通りクロードに預けてきた」
息を整え終えたマティアスは、心なしか不機嫌そうだ。オレリアに義理立てしようとしたというのに、思いの外手間がかかったからだろうか。長い足を組んで頬杖をついているのが見える。