ストーカー気質な彼女は,甘い溺愛に囚われる。

可愛い追跡者。

あ,いる。



「……静流(しずる)? どした」



突然笑んだ俺に,友人の山下真輝が不思議そうな顔をする。



真輝(まき)……。ううん,元気だなあと思って」

「は? 誰が?」



そして俺の返答に眉を寄せた真輝は,後ろを振り返り,また俺を怪訝そうに見た。 



「や,誰もいなくね?」



夕方の廊下に人がいることはあまりない。

でも



「……」



俺は微笑みだけで返す。

うん……そうだね,真輝。

だって,隠れちゃったんだから。

入学して数ヶ月,今から半年以上も前。

とある女の子に絆創膏をあげてから,毎日欠かさず1度以上も見ている存在。

真輝と会話をしながらチラリと後ろに目を移すと……

ほらね,やっぱり。

いるんだよ,真輝。

誰もいない空き教室から顔を出して,天然のパーマを揺らして,こっちを見てる。
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