恋愛ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、推しカプの仲人に忙しいので、そちらはどうぞ勝手にお幸せに

「オレはおまえなんか婚約者と認めないからな」

ついで発されたカイン王太子のお言葉。

そこで、思わず両手で顔を覆ってしまった。


うん、やっぱりそうだ。

ここは、前世でやり込んだ恋愛シミュレーションゲームの世界。

(やった……やったわ…わたくし……あのゲームの中にいるのね!しかも自由に動けるということは補正もなさそうだし……これは……できるわ!ずっとやりたかったことが)

「うふふふぅ……」
「お、お嬢様あ……」

肩を震わせて、こみ上げる笑いを堪えるのに必死だった。嬉しすぎる。大好き過ぎて生活の一部だったあのゲームの中の人になれるなんて。それなんてご褒美?
おろおろした侍女マリネの声が聴こえる。
ごめん、ちょっと今だけ感激の海に浸らせて。


「カイン殿下、それはさすがに失礼極まりないでしょう」

よく通る凛とした声が、カイン王太子の方から聴こえた……ハッ!この低いけれども、程よく艶めいたボイスは。

カイン王太子の侍従長、アベルだ。

アベル・フォン・カーゼンハイム。
カーゼンハイム公爵家の長男であり、彼自身伯爵の爵位を持つ貴族。カイン王太子の生誕時より侍従長に叙され、カイン王太子が誰よりも信頼される方。
すらりとした長身に涼し気な水色の瞳の美丈夫。長めに伸ばした黒髪を後ろで束ね、執事のようにぴしりとブラックスーツを着こなす彼は御年22歳と年頃で、貴族令嬢からの人気も高い。

(見つけたわ……第一目標のカップル!)

このとき、絶対わたくしの目は爛々と輝いていたでしょうね。
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