Cherry Blossoms〜咲き誇った花の名は〜
出血の量はそれほど多くはなく、命に関わるものではないだろう。だが、一花の特殊な血液型のことを考えると、どうしても心配を覚えてしまう。

(酷い怪我ではなさそうだけど、不安しかないな)

桜士とヨハンはある扉の前で立ち止まる。一花はこの部屋に入ったようだ。桜士は緊張を覚えながらヨハンを見る。ヨハンは静かに頷き、桜士はゆっくりと扉を開けた。刹那。

「ッ!」

何か鋭いものが飛んでくる気配がし、桜士は咄嗟に避ける。それは長い一本の針だった。頸動脈を斬り付けるために使用される暗器の一つである。

「一花!!」

ヨハンが大声で名前を呼ぶ。すると、「……ヨハン?」と驚いたような声が返ってきた。二人は部屋の中に入る。

薄暗い部屋の中で、一花は驚いた様子で座り込んでいた。その足からは血が流れている。恐らく、銃弾が掠ったのだろう。

「四月一日先生、遅くなってすみません。助けに来ました」

桜士は一花に近付き、止血をするために足に触れる。その足は温かい。彼女が生きている証だ。
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