命令教室
ただそれだけのこと。
特別なことなんてなにもしてないけれど、その相手が未来だった。


『うっそ、ありがとう!!』


未来は私から大切そうにお守りを受け取って飛び上がらんばかりの喜び方をした。
落とし物を拾っただけでこんなに喜ばれるなんてとおどろいたけれど、その後の話でお守りは母親の形見なのだとわかった。


『1年前に死んでから、ずっと大切に使ってたの。ほんと、ありがとう』


未来の目に微かに浮かぶ涙を見て、その話が嘘じゃないことを理解した。
それ以来、未来はなにかにつけて私に話しかけてくるようになったんだ。


「へぇ、いい話じゃん!」


話を聞き終えた香がパチパチと手を叩く。


「そうだけど、でもキャラが違い過ぎてさぁ」


未来と仲良くなることは別に構わない。
だけど今回みたいに少し強引なところがあるのが問題だった。
私は未来の誘いをちゃんと断れた試しがない。


「そのこと、修くんに相談してみたら?」


不意に出てきた修の名前に心臓がドキンッと撥ねる。
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