その涙が、やさしい雨に変わるまで
美沙希が「松田さんがきたわよ」と告げて、席を外す。
転落した瑞樹を病院にまで運び込んだのは、たまたまそばを通りかかったこの美沙希だった。彼女は初対面であったにもかかわらず、病院まで瑞樹に付き添った。
あのときは、目の前で起こった事故のことをそのままにすることができなかったのだと美沙希はいう。後日よくよくきけば、彼女は元看護師であった。純粋に看護師としての使命感だけで、美沙希は瑞樹に付き添ったのだった。
いざ病院に到着するものの、瑞樹の意識が戻らないから家族への連絡先がわからない。誰も美沙希以外に付き添いがいなければ、必然的に美沙希が瑞樹の看護をすることとなった。
そうしてひととおりの手当てを受けて、安静にすること丸一日、瑞樹は目を覚ました。
目覚めれば、目の前には白い天井。転落したことは覚えていたから、ここが病院であるということはすぐにわかった。
そして、右手に温かな皮膚の感触。誰かが、手をつないでいてくれた。
目が覚めるまで、瑞樹はなにか悪夢をみていたような気がする。はっきりとは覚えていない。ただ、決して心地のよい夢ではないことは確かだ。
夢の中では、黒くて大きくて粘着質なものがのさばっている。それに飲み込まれないように、瑞樹はもがいていた。夜の真っ暗な大海でに放り出されて、救助を求めて浮き沈みする。そんな感覚。
息絶え絶えになり、もがき苦しむ。動くのをやめれば、そのまま飲み込まれて消えていく。恐怖して、そうならないように足搔き続けた。そんなことを永遠に行う。助かる兆しが全然、得られない。もう絶望的な気持ちしかない。
それを救ってくれたのは、手だった。低く垂れ込んだ暗雲の中から、不意に白く輝く手が現れた。差し伸べられたその手に、必死になって瑞樹はしがみついた。
目覚めて右の方、温かな手の感触のある方へ視線を遣れば、美沙希が手をつないで眠っていた。簡易椅子に座って、ベッドの上にうつ伏して眠っている美沙希がいたのだった。
転落した瑞樹を病院にまで運び込んだのは、たまたまそばを通りかかったこの美沙希だった。彼女は初対面であったにもかかわらず、病院まで瑞樹に付き添った。
あのときは、目の前で起こった事故のことをそのままにすることができなかったのだと美沙希はいう。後日よくよくきけば、彼女は元看護師であった。純粋に看護師としての使命感だけで、美沙希は瑞樹に付き添ったのだった。
いざ病院に到着するものの、瑞樹の意識が戻らないから家族への連絡先がわからない。誰も美沙希以外に付き添いがいなければ、必然的に美沙希が瑞樹の看護をすることとなった。
そうしてひととおりの手当てを受けて、安静にすること丸一日、瑞樹は目を覚ました。
目覚めれば、目の前には白い天井。転落したことは覚えていたから、ここが病院であるということはすぐにわかった。
そして、右手に温かな皮膚の感触。誰かが、手をつないでいてくれた。
目が覚めるまで、瑞樹はなにか悪夢をみていたような気がする。はっきりとは覚えていない。ただ、決して心地のよい夢ではないことは確かだ。
夢の中では、黒くて大きくて粘着質なものがのさばっている。それに飲み込まれないように、瑞樹はもがいていた。夜の真っ暗な大海でに放り出されて、救助を求めて浮き沈みする。そんな感覚。
息絶え絶えになり、もがき苦しむ。動くのをやめれば、そのまま飲み込まれて消えていく。恐怖して、そうならないように足搔き続けた。そんなことを永遠に行う。助かる兆しが全然、得られない。もう絶望的な気持ちしかない。
それを救ってくれたのは、手だった。低く垂れ込んだ暗雲の中から、不意に白く輝く手が現れた。差し伸べられたその手に、必死になって瑞樹はしがみついた。
目覚めて右の方、温かな手の感触のある方へ視線を遣れば、美沙希が手をつないで眠っていた。簡易椅子に座って、ベッドの上にうつ伏して眠っている美沙希がいたのだった。