その涙が、やさしい雨に変わるまで
どうして手を繋いでいてくれたのかと訊けば、瑞樹がひどくうなされていたからという。
病院側の都合とはいえ無断外泊させてしまったと謝れば、ひとり暮らしだから気にしなくていいという。
それでも仕事があるだろうといえば、たまたま代休を取っていて三連休だったから大丈夫とのこと。ただし休みは今日で終わりだから、夕方にはお暇するわねと美沙希は告げたのだった。
ずっとそばにいて悪夢から自分を吸い出してくれた手の持ち主が、もうこれでお役目御免という。
数時間後に彼女がいなくなることが、ひどく怖かった。あの得体のしれない夢から覚めたというのに、美沙希がいなくなればまたそこへ引き戻されそうである。
だから、瑞樹は乞うた。そばにいてほしいと、美沙希に懇願したのだった。
「松田さん、すごく青ざめた顔していたけど、大丈夫かしら?」
三琴と入れ替わりに戻ってきた美沙希が、心配そうにいう。
それは、瑞樹が「あなたのことが誰だかわからない」と三琴へ告げたから。瑞樹のせいである。告げた瑞樹本人も、胸が苦しい。
原則、面会謝絶の瑞樹の病室へ、三琴は出入りができた。このことから、彼女は業務のかなりの部分を瑞樹と共有している社員だとわかる。なのに彼女の顔をみても、瑞樹はこれっぽちも思い出すことができない。
隠しても、これはいずれはわかること、正直に瑞樹は三琴へ告白した。
そして、彼からみえないところで三琴は涙を流したのである。
この記憶の欠如は、三琴についてだけ当てはまるものではなかった。他の社員の何人かにも、三琴とまったく同じことが起こっていた。
また記憶喪失に気がついたのとほぼ同時に、瑞樹は片頭痛に悩まされるようになる。
病院側の都合とはいえ無断外泊させてしまったと謝れば、ひとり暮らしだから気にしなくていいという。
それでも仕事があるだろうといえば、たまたま代休を取っていて三連休だったから大丈夫とのこと。ただし休みは今日で終わりだから、夕方にはお暇するわねと美沙希は告げたのだった。
ずっとそばにいて悪夢から自分を吸い出してくれた手の持ち主が、もうこれでお役目御免という。
数時間後に彼女がいなくなることが、ひどく怖かった。あの得体のしれない夢から覚めたというのに、美沙希がいなくなればまたそこへ引き戻されそうである。
だから、瑞樹は乞うた。そばにいてほしいと、美沙希に懇願したのだった。
「松田さん、すごく青ざめた顔していたけど、大丈夫かしら?」
三琴と入れ替わりに戻ってきた美沙希が、心配そうにいう。
それは、瑞樹が「あなたのことが誰だかわからない」と三琴へ告げたから。瑞樹のせいである。告げた瑞樹本人も、胸が苦しい。
原則、面会謝絶の瑞樹の病室へ、三琴は出入りができた。このことから、彼女は業務のかなりの部分を瑞樹と共有している社員だとわかる。なのに彼女の顔をみても、瑞樹はこれっぽちも思い出すことができない。
隠しても、これはいずれはわかること、正直に瑞樹は三琴へ告白した。
そして、彼からみえないところで三琴は涙を流したのである。
この記憶の欠如は、三琴についてだけ当てはまるものではなかった。他の社員の何人かにも、三琴とまったく同じことが起こっていた。
また記憶喪失に気がついたのとほぼ同時に、瑞樹は片頭痛に悩まされるようになる。