王子様との奇跡な恋をⅢ



唯人「そう。1回だけ帰るのが遅くなって、一緒に怒られた日があったね。その時君がなんて言ったか覚えてる?」




唯一「…………。」



分からなくて、首を横に振る。




それを見て唯人さんが微笑む。



唯人「私が悪いんだから、怒らないでって。自分も怒られてて、泣いてるのに必死に俺の事を庇って。可愛かった。」




唯一「それ……おじいちゃんに怒られた時の……。」





唯人「そう。覚えてた?」




唯一「唯人さんだったの?」




唯人「じゃあ、俺たちがどうやって出会ったか覚えてる?」




唯一「あまり覚えてない……。」




唯人「結構昔のことだからね。覚えてないと思う。」

「俺と唯一が出会ったのは15年前。君が5歳で俺が10歳の時。俺は両親に虐待を受けていて、いつも学校が終わったあと、あの公園で少し時間を潰してたんだ。」





唯一「虐待……。」





唯人「そう。辛くて1秒でも家に居たくなくて公園で時間を潰してた。」




少し目が潤んで泣きそうになった。




唯人「いつもみたいに時間を潰してる時に目の前で女の子が転んだんだ。近寄って転んだ女の子に大丈夫?って声を掛けた。」




唯一「それって。」




唯人「それが唯一との初めての出会い。」

「その時、唯一はなんて言ったか覚えてる?」





唯一「覚えてる。確か……。」




唯人「お兄ちゃんも大丈夫?って言ったんだよ。俺は怪我してないのになんでそんなこと言うんだろうと思って。」

「何が?って聞いたら、俺の頭を撫でながら落ち込んでるって言って慰めてくれたんだよ。」

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