上司の甘い復讐



ハゲ崎に言われながらも財布や携帯を確認するが、ハゲ崎に盗まれてはいないようだった。

私は鞄をぎゅっと抱きしめ、眉をひそめてハゲ崎を見ていた。

そんな私に、相変わらずの無表情でハゲ崎は言う。


「お前がパニクっていたから、俺が持ってきてやった。

どうせ忘れるだろうと思って」


そして案の定、ハゲ崎の言う通り私は鞄を忘れた。

普通ならは、ありがとうございますとお礼を言うべきだろう。

だけど、ハゲ崎なんかに頭を下げたくもない。

うらめしげに見る私に背を向け、


「行くぞ」


ハゲ崎は歩き始める。

だから私はまた、慌てて後を追った。

そして展示会の会場へと入っていったのだ。



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