来世なんていらない

生きていく為に

全部の授業が終わって、終礼の時間。

「明日から六月です。なので、明日からは夏服です」って先生が言った。

夏服…。
私が恐れていたことだ。

一年の時は、まだここまで傷は多くなかった。
絆創膏で誤魔化したり、
休み時間はカーディガンを羽織ったりしていた。

完全にバレてなかったわけじゃないと思うけど、今よりはずっとマシだった。

今年はもう、夏休みまで耐えられるか分からない。

「えーっと、先日の学年会議で決まりましたが、今年はカーディガンなどを羽織ることを許可します」

え…。

ザワザワと教室が騒ついた。

「先生ー!なんでー!?」

「少し前にね、小高くんが提案に来てくれたのよ」

先生が穏やかに微笑む。
みんなが一斉に真翔を見た。

「学校では夏服に切り替わる日を強制的に設けているけど、一人一人、体感や体調、それからアレルギーとかによる肌の事情も違うでしょう」

「確かに」

「私も思ってた」

「嘘つけよー」

とかみんなが口々に言う。

「なので、二年生では上から羽織ることを許可することに決まりました。ですが!これは現状、二年生だけなので、先輩、後輩、きょうだいとかに勧めちゃだめよ?そのうち全校会議に持ち込むつもりだから、それまでは自ら勧めないように!」

「はーい!」

あぁ。早く振り返って真翔の顔が見たい。
どんな表情をしてるんだろう。
みんなに凄いねって言われて、きっと子どもみたいに無邪気な顔で笑ってるんだろうな。

凄い…
真翔って本当に凄い!
< 65 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop