別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
 未来は希望の高校に無事入学し、少しづつ本来の笑顔を取り戻していった。

 父も祖母も明るく素直な未来を、本当の娘や孫のようにかわいがっていた。

 自分も『和くんおつかれさま』と未来に笑いかけられると、残業が続いていても、強行軍の出張帰りでも疲労が吹き飛ぶから不思議だった。

 未来が屋敷にいることが和輝にとっても当たり前の日常だった。
 この生活がずっと続く。そのはずだった。

「何が本当の兄だ。当時の俺が今の状況を知ったら愕然とするだろうな」 

 執務椅子の背もたれに背中をあずけながら和輝は自嘲した。
 
 妹のように大事な未来の初めてを奪った上に、強引に結婚に持ち込もうとしているのは誰だと。

 つい物思いに耽っているといきなりドアが開かれた。
 ノックもせずに副社長室に入ってくる人間はこの会社では、ひとりしかいない。

「失礼するよ」

「社長、急にどうかされましたか? 打ち合わせの予定はなかったはずですが」

「急にすまないね、話したいことがあって」

 父、猪瀬貴久は応接セットのソファーに座る。
 声をかけておいたのか、秘書がコーヒーを準備し、応接テーブルの上にふたつ置いて頭を下げて部屋から出ていく。
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