別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
 父はたまに忙しさから逃れるようにこうして副社長室に避難してくることがある。
 おそらく、休憩メインだなと思いつつ、和輝も貴久の斜め前に座る。

「日比野楽器の本社オフィスの件、向こうの社長から正式に依頼をもらった。あとは君に引き継いでいいか?」

「はい、構いません。僕の方で対応します」

 貴久の言葉に和輝はうなずいた。

 日比野楽器は日本有数の楽器メーカーで、全国に楽器店や音楽教室を展開する大企業である。
 この度、銀座ある本社を渋谷に建設中の新しいビル内に移転することになり、そのオフィス環境構築をすべてIONSEで担うことになった。

 世界的にも知名度の高い日比野楽器の新しいオフィス、先方の社長からは自社の特色を出し、内外にアピールできる最新の環境にしたいと要望されている。INOSEにとっても格好のビジネスチャンスとなる。

「近いうちに日比野社長と加奈さんが、新オフィスの参考にするためにウチを見学されるそうだ。僕もフォローするけど案内を頼むよ」

 加奈、という名前に和輝は反応する。

「加奈さんも、ですか。たしか彼女はドイツで活動しているはずでは?」
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