さよならの夜に初めてを捧げたら御曹司の深愛に囚われました
「社長の要件は済んだのでお連れしてくれ」

「ちょっと待て、和輝」

「大丈夫です社長。ここまで来たら引けませんから成果は上げますよ。ああそれと近いうちに屋敷に顔を出します」

 社長は次の予定の時間が迫っているようだ。思い切り後ろ髪をひかれた様子で秘書に連行される父を見送る。

「未来のお父さんならまだしも、親父に殴られるのは納得いかないからな」

 さすがに失恋につけこんで彼女の初めてを奪った上、マンションに連れ込みガッチリ囲い込んで結婚を迫っている最中だとは言えない。

(未来、あの夜は君にとって終わりでも、俺にとっては始まりだったんだ。失恋相手なんて忘れるくらい愛するから、心もすべて俺にくれ)

 和輝は未来の笑顔を思い浮かべながら心の中でつぶやいた。

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