別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
「私はそういうわけにはいかないんです」
 
「なら、東京駅の近くでふたりで食事でもしながら話すことにしたらどうだ? その方がお父さんも効率的に移動できる」

「あ、確かに」

 急な話で動揺してしまったが、東京駅まで迎えに行くのならそのままどこかの店で話をしたらいいのだ。

(よく考えてみたら、外で食事しても不自然じゃないし、お父さんが私のこと根掘り葉掘り聞いてくるとは思えないよね。前のアパートに住み続けている体で話をしておけばいい)

「さすが和くん、そうするね!」

 未来がホッとした笑顔をむけると和輝は大きな手でゆるゆると頭を撫でてくれた。


 翌日、予定通り東京駅で父と待ち合わせした未来は、ふたりで日本橋にあるビルに入る上品な雰囲気の和食レストランを訪れた。

 通された個室のテーブル席に着きつつ父が口を開く。

「未来、急にすまなかった。しかもこんないい店まで予約させてしまって」

「ううん。大丈夫だよ。ほら、アパートに来てもらうより効率的かなと思ったから」

(予約してくれたのは和くんだけどね……)
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