別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
「はぁ~やっぱりそうか。お前、元からかわいかったけど最近急に綺麗になるからちょっと焦ってた。結構露骨にアプローチしてたつもりだけど、その顔を見ると気が付いてもらえなかったかー」

 眉を八の字にして力なく笑う尾形にもう一度謝る。

「尾形君……ほんとにごめん」

 尾形が誠実な人間だと知っているだけに、彼の想いに初めて気づいたことも、受け入れられないことも申し訳なく感じる。

「いや、責めるようなこと言って悪い。それに、いたたまれなくなるからもう謝るの無しな。これからも同期として変わらずよろしくな」

 未来を気遣って明るくしてくれているのが分かるから、未来も笑顔で応える。

「うん、ありがとね。これからもよろしく」

「ずっと好きな人、か。失恋直後にどんな男か聞けるほど鋼メンタルじゃないから聞かないけど、うまくいくといいな」

「……うん」

 尾形の言葉に未来はあいまいに笑うことしかできなかった。

「さーて、今日はヤケ酒だ。さっさと仕事終わらせるぞ、ほら、お前は気を付けて帰れよ」
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