別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
「……こんなところで言うことじゃないんだけど。案外ふたりきりになるチャンスが無くてさ」

 尾形は未来をまっすぐ見て言った。 

「俺、入社したころから園田のこと、好きなんだ」

「……え」

 思いがけない言葉に未来は目を見開いた。

「よければ俺と付き合ってくれないか? 今は同期としか見れなくても、いつか男として好きになってもらえるように努力するから」

 不安と緊張と熱意が籠った告白。彼の真剣な眼差しから冗談でないことが痛いほど伝わってくる。

「尾形くん……」
 
(尾形くんが私のことそんな風に思ってくれてたなんて……私もごまかさずに、ちゃんと答えなきゃ)
 
 未来は背筋を伸ばして尾形を見上げた。

「尾形くんの気持はうれしい。でも、ごめん、私、ずっと好きな人がいるの」

 尾形の告白を前にしても、未来の心にいるのはたったひとりの男性。

(日比野さんと結婚するって知っても、私はやっぱり和くんが好き。そんな状態で尾形くんと付き合うわけにはいかない)

「……だから、ごめん」

 未来はゆっくり頭を下げた。尾形はしばらく沈黙した後、思い切りため息を吐いた。
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