さよならの夜に初めてを捧げたら御曹司の深愛に囚われました
 未来は反射的に和輝から身体を引こうとしたが、そうはさせまいとばかりに彼は素早く片手を未来の後頭部に滑らせると逆に自分の方に引き寄せ、顔の角度を変えつつさらに何度も唇を重ねてくる。
「ちょ、か、かずく……っ、んあ……」
 
 唇がわずかに離れた瞬間、未来は酸素を求めようと口を開く。しかしそれを待っていたかのように彼の舌が未来の小さな口内に侵入し中を探り始める。
「んっ……!」

 和輝が飲んでいたウィスキーの香りが未来の鼻腔をくすぐる。
 芳香と共に送り込まれる初めての感覚にゾクリと背中が震え、あっという間に身体の芯が融けていく。
 動悸でおかしくなりそうになりながら、未来は縋るように和輝のジャケットの胸をギュッとつかむ。
 そこでやっと和輝の唇が離れた。

 しかし和輝は未来を逃すつもりはないようで、身体を引き寄せたまま耳元で囁いた。
「これは初めのキス?」

「……そ、そう、だけどっ……こんな」

「こんなキスされると思っていなかった? でも、教えて欲しいと言ったのは君だ」

「……っ」

 冷静な声色なのに、耳にかかる吐息は熱い。

(この色気全開の人は誰? そしてこれは現実なの?)
 何の反応も出来ずにいる未来に和輝は言った。

「俺が君に教えることはこれだけじゃない。わかってるだろう?」
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