さよならの夜に初めてを捧げたら御曹司の深愛に囚われました
1.失恋の足音
「そんな訳で営業に出るのはもう暫く待ってもらいたいんだ」

 午後一で呼び出されたミーティングブース。上司に申し訳なさそうに言われ、園田未来(そのだみく)は思わず落胆の声を上げた。

「えぇ……もうすぐお客様の所に行けると思ってたのに……」

 158cmで華奢な体つき、肩下まで伸ばしている少し茶色がかった髪は柔らかく、大きい瞳に対して小さめの鼻と口が24歳という年齢より若い印象を与えているらしい。
 入社3年目にもなるのだから頼れる大人の女性として仕事をしていきたいのだが、この雰囲気のせいか周りの人にかわいがられるばかりで、ありがたいと思いつつ少々複雑だ。

 未来の勤めるここ“株式会社INOSE”は、文房具から事務機器、家具まで幅広く事業を展開している総合事務機器メーカーで国内では1、2を争うシェアを誇る大企業である。

 未来はその中で主にオフィス向け家具を取り扱うファーニチャー部門の国内法人営業部関東営業1課に所属している。
 国内法人営業部は主に企業向けに事務機器の販売や、オフィス環境のデザインや構築などを担う部署だ。
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