さよならの夜に初めてを捧げたら御曹司の深愛に囚われました
 昨日の朝の電話で父再婚話を切り出されたときに『そうだ、報告するの忘れててごめん。やっぱり実家は勤め先から遠いから、他の場所にしようと思って引っ越し延期にしたんだ』と咄嗟に嘘をつきごまかしていた。

 しかし、実際のところ引っ越し業者は手配済みだし、コツコツやっていた荷造りもほとんど終わっている。もちろんアパートの退去手続きも済んでいる。
 今日昼過ぎに管理会社に問い合わせたが、既に次の入居者も決まっていて退去を引き延ばすことはできないらしい。

 それならすぐに違う引っ越し先を探せばいいのだが、とにかく時間が無さ過ぎた。

「明日は早めに仕事終わらせて不動産屋さんに行かなきゃ」
 
 即入居可能でなるべく希望に合うような物件を探すしかない。
 それができないなら予定通り一度実家に荷物を運びこみ、新居を決めてからもう一度引っ越しをするしかないが、正直かなりの手間とお金がかかってしまうから避けたいところだ。

 未来は食事を終えると、賃貸情報をチェックしようとテーブルの上に置いたノートパソコンで検索をかけようとした。すると。
 
 ピンポーン

 インターホンが鳴り、未来はビクンと肩を揺らす。
< 87 / 230 >

この作品をシェア

pagetop