ウェディングドレスは深紅に染まる

 結婚儀式を明日に控えた花嫁は、今日も小さな窓から広い空を眺めていた。

 仲が良さそうなつがいの小鳥がチューンと楽しそうに歌っているのを、ぼんやりと見つめていたエリナは、無意識にピィィと口笛を吹いた。

 小鳥たちは驚いたのかどこかに飛んでいってしまい、エリナの瞳には青い空だけが残される。

 それでも、子供の頃、ヴァイオスと一緒に練習した口笛を狂ったように吹き続けた。

 とうとう音も出なくなり、のどに痛みが走る。空気を思いっきり吸い込んだ刺激でゴホゴホと咳き込んでいると、空に黒い点が現れる。

 それは、だんだんとはっきりとした形になり、エリナの前に舞い降りた。

「……ビ……ヨ……グル……」

 ヴァイオスが相棒だと大切にしていた一羽の鷹。

 眼光鋭かった目を深い悲しみの色に染め、キィィーーーと胸が張り裂けそうなほど切なげに鳴く声に、エリナの心はドクンッと大きく震え、凍っていた感情が動き出す。

 あの人は……もういない……

 声にならない叫び声を上げ、(せき)を切ったようにわあわあと泣き崩れる。

 ビヨグル、ビヨグル。
 一緒に泣こう。
 お前の大事なあの人を思って。
 私の大事なあの人を思って。

 今までの分、これからの分。
 全ての涙を枯らしてもいい。

 一緒に泣こう…………

< 11 / 16 >

この作品をシェア

pagetop