ウェディングドレスは深紅に染まる
結婚儀式を明日に控えた花嫁は、今日も小さな窓から広い空を眺めていた。
仲が良さそうなつがいの小鳥がチューンと楽しそうに歌っているのを、ぼんやりと見つめていたエリナは、無意識にピィィと口笛を吹いた。
小鳥たちは驚いたのかどこかに飛んでいってしまい、エリナの瞳には青い空だけが残される。
それでも、子供の頃、ヴァイオスと一緒に練習した口笛を狂ったように吹き続けた。
とうとう音も出なくなり、のどに痛みが走る。空気を思いっきり吸い込んだ刺激でゴホゴホと咳き込んでいると、空に黒い点が現れる。
それは、だんだんとはっきりとした形になり、エリナの前に舞い降りた。
「……ビ……ヨ……グル……」
ヴァイオスが相棒だと大切にしていた一羽の鷹。
眼光鋭かった目を深い悲しみの色に染め、キィィーーーと胸が張り裂けそうなほど切なげに鳴く声に、エリナの心はドクンッと大きく震え、凍っていた感情が動き出す。
あの人は……もういない……
声にならない叫び声を上げ、堰を切ったようにわあわあと泣き崩れる。
ビヨグル、ビヨグル。
一緒に泣こう。
お前の大事なあの人を思って。
私の大事なあの人を思って。
今までの分、これからの分。
全ての涙を枯らしてもいい。
一緒に泣こう…………