愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました
「その可愛い顔に免じて、今回は口付けはやめておこう。しかし、その顔を他の男には決して見せないように。特にアレンにはね」

ノア様が私の頬から手を離す。


「さぁ、セレアの好物をシェフに作らせたんだ。冷めないうちに頂こうか」


折角、ノア様が私のために用意してくれた食事だったが、私は気が動転していてあまり味を楽しめずに終わってしまった。

「セレア、また会いに行くから」

別れ際、そう仰ったノア様は精悍《せいかん》とした王族らしい佇《たたず》まいだった。
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