雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
今度は私の番だ。創介さんの家に、挨拶に行く日が近づいて来た。
「――それで、着て行く服を選んでほしいって?」
それで、創介さんにお願いしたのだ。
自分の持っている服は、いたって普通の良心的な値段のもの。市役所で働いているには困らない。むしろその環境に合わせた服装だ。
必要以上に見栄えをよくしようとは思わないけれど、失礼にあたらないきちんとしたものは着て行きたい。
「創介さんなら、会合とか、会食とか。そういうところでたくさんの女性を見ているでしょう? だからと思って……」
「それなら、いい店を一軒知ってる」
そう言って、創介がある店に連れて来てくれた。
「俺の知人の店なんだ」
車を降りて、創介さんの後に続く。
ガラス張りで、店内は開放感に満ちていた。
「久しぶりだな」
店内に置かれていた白いソファから誰かが立ち上がる。
「休みの日に悪いな。俺には、ここしか思いつかなくて」
「いいよ。姉貴も、おまえが来てくれるって喜んでたし」
そこにいたのは……五年前、二人で話をした木村さんだった。
「雪野ちゃん、お久しぶり」
「お久しぶり、です」
笑顔を向けられて、慌てて頭を下げる。
「聞いたよー。結婚するんだって? 良かったね。見返りを求めない強い愛が勝ったんだね。あの時の君の覚悟は報われたんだ」
もう五年も前になるけれど、その時の会話は今でも覚えている。初対面に近い木村さんに、言いたいことを言い放ってしまった。
「――どういうことだ?」
低い声が私と木村さんの会話を遮る。
「いや、まあ、なんでもない。俺と雪野ちゃんとの二人の秘密。ね?」
そんなことを言ったら余計に、創介さんに変に思われる。
あの時、二人で話したことはお互い創介さんには言わないことにしていたはずだ。
「秘密? おまえたち、面識なんてほとんどないはずだよな?」
「そんな怖い顔するなよ。別に、おかしなことはしていないから。それより、今日は、雪野ちゃんの服を選びに来たんだろう? 朝から姉貴が張り切ってたぞ」
そう言って木村さんが話を変えると、店の奥から長身の女性が出て来た。