雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
華織さんが見立ててくれたのは、春らしい、ピンクベージュのワンピースだった。
こうして、なんとか形は整えた。
大丈夫だと何度も自分に言い聞かせる。言い聞かせている時点で、どうしようもなく緊張している証拠だ。
でも「大丈夫」だと思うしかない。そんな心境で、ここに立つ。
凄いだろうとは予想していた。知らない人はいない、大企業の創業家だ。ちょっとやそっとのお金持ちの家とはわけが違う。そう分かっていた。
でも、実際に目の当たりにすると身がすくむ。
敷地を囲むようにある塀がどこまでも続いていて、その中はほとんどうかがい知れない。門構えの脇には、樹齢何年だろうと思うほどの立派な大木がある。
都内の一等地、高級住宅街として有名なその場所であっても、創介さんの家は一際大きい。
初めて目にした創介さんの生まれ育った家は、私の目の前に大きくたちはだかった。
「――雪野。行こうか」
隣に立つ創介さんが、私を気遣うようにそっと腰に手をあててくれる。
「は、はい」
声までも引きつっている。この先に待ち受けるものに、怯えずにはいられない。
「雪野」
つい力が入ってしまう肩に、創介さんが手を置いた。それに気付いて顔を上げると、創介さんがじっと私を見ていた。
「ここは、おまえの家のように暖かい家じゃない。笑って出迎えたりしてくれるようなこともない。でも、何も引け目を感じることはない。雪野に自分を恥じる部分なんて何一つないんだ。いいな?」
「はい」
創介さんの視線が、真剣に私に伝えてくれる。そして肩に添えられた大きな手のひらが私を勇気づけてくれる。
「それに、雪野の隣には俺がいる。一人じゃない」
「はいっ」
――大丈夫。今度は心からそう思える。
私は真っ直ぐに前を向いた。