雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「これからどこに行くんですか?」
不安ばかりで、すがるように見つめてしまった。
「戦う前にすることと言えば?」
創介さんがいたずらっぽい目を私に向ける。
「戦う……?」
その言葉の意味が分からなくて頭を傾げた。
「戦闘前にすることは武装だよ。今日は俺がしっかり武装させてやるから、安心しろ」
そう言って創介さんが私の手のひらを取る。そして握りしめてくれた。
訳が分からないままに連れて来られたところは、おそろしく敷居の高そうな店だった。歩道に面して立つその建物にはほとんど窓がない。
創介さんの手がしっかりと私の手を握りしめ、その中へと連れて行く。
「榊様、お待ちしておりました。専用のお部屋を準備しておりますのでごゆっくりお選びください」
「助かるよ」
出迎えに出て来た女性店員と創介さんの会話をただ聞いていた。
「ね、ねえ、創介さん。ここは……」
引き入れられた店内は、思っていたのと雰囲気が違った。外から閉じられているかのように思えたのに、吹き抜けと高い位置にある窓から光が差し込み、開放感に満ちた雰囲気になっていた。外とは隔離していながら、店内には光が降り注ぐ。
「ここは、俺がいつもフォーマル用の衣装を仕立ててもらう店だ。長い付き合いだから、おまえも緊張することない」
そんなことを言われても――!
「あ、あの――」
あたふたとしている間に、店の奥にある部屋に通されていた。
「今日は、妻を変身させたい。ドレスコードが”ブラックタイ”のパーティーに出席する。それに合わせて頼むよ。とりあえず、妻に似合いそうなドレスをいくつか選んでもらいたい」
「かしこまりました。奥様、では、本日はよろしくお願い致します」
私に向かって深く頭を下げる女性の店員さんに、私も慌てて頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
緊張して動きがかくかくとしてしまう。
店員さんの後について行きながら、つい、不安な気持ちのまま創介さんを振り返ってしまった。
「行っておいで」
置かれていた一人掛けのソファに腰掛けた創介さんが、私に微笑みかけた。