雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「千賀子さん、あなたを妊娠する前からずっと痩せ気味でね。今思えば過度なストレスも原因だったと思うわ。あなたのお父様のせいで心労もあったでしょう。ときどきたちくらみやめまいなんかもあったみたい。そんな身体で創介を妊娠して――」
祖母が窓の外に視線を移す。
「それはもう大変な妊娠中だった。つわりは酷いし、貧血は進むし。切迫早産にもなって、何度も入院していたわね。それでやっと出産の日を迎えたんだけれど、貧血を持っていたのもあって出産時の出血が多くて。それで余計に産後の回復が進まなかった」
貧血――。
その言葉に、思考が止まる。母は、そんなに身体に負担をかけて俺を産んだのか。
「結局、そのまま大きな病にかかってしまって。でも、出産の負担が直接的な原因かどうかなんて分からない。あなたのお母様がそういう運命だったのかもしれないしね。だから、創介には詳しいことを話せなかった。こんな話をしたら、自分を産んだせいだなんて思わせてしまうと思ってね」
少なくとも妊娠して出産しなければ。身体をそれ以上に痛めつけなくて済んだかもしれない。
「それに、あなたのお母様は、あなたが生まれた時本当に幸せそうな顔をしていたから、余計に変な誤解をさせたくなかったの……って、創介、聞いてるの?」
「あ、ああ。聞いてる。話してくれて、ありがとう」
おもむろに立ち上がる。
「じゃあ、今日は失礼するよ。今度は雪野と来る」
「え……っ? もう?」
驚く祖母をそこに残したまま、榊の家を出た。