雪降る夜はあなたに会いたい 【下】


「係長! なんで俺がインタビュアーなんですかっ!」
「まあまあ、落ち着けって」

係長が苦笑いしながら俺をなだめようとする。

どうして朝からこんなに声を荒げているかと言うと――。

榊常務へのインタビューまでのスケジュールと段取りなんかをまとめたペーパーが朝配られた。

そこにあった……

【インタビュアー】 広岡

俺の名前を見つけて、今こうして係長に怒りをぶつけている。

「広岡、そんなに大きな声も出せたんだな」

寺内さんが他人ごとのように呑気にそんな言葉を挟んで来る。

「通例なら、管理職以上へのインタビューは係長以上が担当していたじゃないですか! 今回なんて常務ですよ、あの丸菱の人ですよ!」

絶対に撤回させてやる。

「僕みたいなペーペーが対応していい相手じゃない!」
「いや、本来ならそうなんだけどね。でも、ああいう質問投げ掛けたことで榊常務のご機嫌損ねてもさ……。室長も俺も、キャリアに傷付けたくないって言うか。常務に睨まれでもしたら今後の昇進に関わるから、あんまり目立ちたくないんだよねー」
「なんですって……?」

係長の奥の席にいる室長も睨んでみても、しらーっと目を逸らされた。

「僕なら、いいと……?」
「いや、ほら、広岡はまだ若い。多少の失敗は許される。それに、おまえ元々やる気もなさそうだし、ミスが響かないかなーなんて。というわけだから、これはもう決定事項だ。当日は、もちろん俺も同行する。何かあったらフォローするから。なっ。よろしく頼むよ~」
「係長っ!」
「俺、営業二課に用があるから席外すよー」

逃げやがったな!

「広岡、この質問、頑張れよー」

そう言って俺の胸に資料を押し付けて、寺内さんもどこかへと行ってしまった。


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