雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「では、始めさせていただきます――」
質問事項が書かれた資料を手にそう言うと、三井が何やら前に出て来た。
「榊常務、インタビューの前にワンショットいただきたいので、まずはそのお席に座っていただけますか?」
俄然血が騒ぎだしたのか、先ほどまでのニヤニヤしていた姿はどこへやら、その目が怖いほどに真剣だ。
「ああ、ここでいい?」
「はい。いつもの、お仕事されてる感じで」
役員用の立派な机と椅子。窓を背にして榊常務が席に着く。
「はい。ありがとうございます。で、ですね、申し訳ございませんが、腕時計をされている方の腕の肘を机についていただいて、もう片方の手で何か資料を捲る感じで――」
「え? あ、ああ、こんな感じ?」
おい! おまえは一体、常務に何をさせているんだ――!
「はい! 最高です――じゃなくて、完璧です」
おまえ――。それ、完全に自分が見たいショットだよな……?
俺がそんな思いを目に込めて、三井を睨みつけるけれど、三井は完全に俺を無視してノリノリで写真を撮っている。
部屋の片隅から、異常に厳しい視線を感じる――。
おそるおそるその方に視線を向けると、神原さんが険しく厳しい視線を三井に向けていた。
気付けよ、おい! ばか三井め――!
「――では、撮影はそのくらいにしてインタビューに入らせていただきます」
さすがに係長もその雰囲気を察したのか、三井を牽制するように言葉を挟んで来た。
いよいよ俺の出番だ。
敢えて質問事項を読み込むことはしなかった。ざあっと目を通しただけだ。頭に叩き込んで来る方がよっぽど緊張する。そう思ったからだ。
もう、出たとこ勝負。榊常務との一本勝負だ。