雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
応接セットのソファに移動してもらい、インタビューの準備を始める。
榊常務の向かいに俺が座り、そのあたりにカメラを構えた三井がいる。
そして部屋の隅に秘書の神原さん、その隣に俺たちを見守るように室長と草陰係長と寺内さん。
俺は、ふうっと息を吐き、正面にいる榊常務を見据えた。
「では、これから僕が質問していきますので、それにお答えください。もし、どうしても答えるのに憚られるような質問がありましたら、遠慮なくおっしゃってください」
これから待ち受けている質問の数々を思うと、そう言わずにはいられなかった。榊常務が気の毒でならない。
その時、鋭い視線を感じる。異様な圧でそれを感じたからつい視線をちらりと向けてしまった。その視線の主は、三井だった。
”余計なこと言ってんじゃないわよ。どんな質問にも答えさせるのがインタビュアーの力の見せどころでしょ?”
とでも言わんばかりのガン飛ばし。
”うるさい。おまえは黙ってろ”
そう視線で返してやった。
「……インタビューには関係ないけど、広岡さんは入社何年?」
「え?」
目の前の榊常務が突然そんなことを言って来た。
「ええ、三年目ですが――」
もしや、怒ってる――?
常務に対して入社三年目の若手をあてがってきたことに。
「す、すみませんっ、これには理由が――」
慌てたような声が俺の背後から飛んでくる。
その声は室長か。
「ああ、いや。ただ単純に気になっただけです。やはり、それくらいか。見た感じそうかなと」
そう言って慌てふためく室長を遮った。
「私の妻と同じくらいかなと、ふと思ったもので。本当に、同じ年だった」
「――奥様、と?」
一瞬張り詰めた緊張が、とけていく。
「わ、私もです!! 広岡君と同期で入社三年目、奥様と同い年です! 結婚を夢見る25歳です!」
……だからどうした。
今度は、興奮したような声が飛んで来た。三井の声だ。顔を見るまでもない。おそらく、またも目を輝かせているに違いない。榊常務が苦笑している。
バカな奴め。
「――関係ないことを言って悪かった。どうぞ、始めてください」
一つ咳ばらいをしてから榊常務が身を正した。
「はい。では、申し訳ありませんが録音をさせていただきます」
そう告げて録音機のスイッチを押す。