雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
意外な人からの意外なアシストもあり、広報誌を手にした奥様は更に目を輝かせ。そして、隣にいる常務は、息を吐き、そこから目を逸らした。
「凄い! 創介さん、表紙にも写ってる……っ!」
そう感嘆の声を漏らしたまま、いっこうに次のページを捲ろうとしない。
「あ、あの、奥様。次からが榊常務の特集ですよ? それはまだ、表紙なだけで……」
あまりにじっと見つめているものだから、つい言葉を掛けた。
「え? ええ、分かっているんですけど、でも……」
奥様がそこまで呟いて押し黙る。そして、ほろ酔いなのか既に赤かった頬を、更に染め上げた。
「もしかして……、常務の写真、かっこいいとか、思っていたりします?」
隣にいる広岡君を押しのけて、身体を奥様の方へと乗り出した。
「は、はい……」
照れている。奥様、照れています!
「そうですか! そうですか! なら、尚更次のページ見てください。もっと常務の写真満載ですからっ! これ、全部、私が撮りましたから!」
押しのけてもやっぱり広岡君が邪魔で。席を交換してもらう。そうして隣になった読者さんにも見えるように、奥様の前で、手取り足取り解説をした。
「これなんか、カッコよくないですか? このポーズは私の指示です。いかがですか、奥様」
「すごく、いいです。素敵……」
「お、おいっ。まさか、飲み過ぎたんじゃないだろうな?」
隣で、顔を赤らめて自分のことを「素敵だ」などと奥様に言われれば、常務もたじたじだ。
「お酒? は、はい。美味しくいただいています」
皆で奥様の前にならんだグラスを数える。
1、2、3、4、5……。5杯。5杯というのが奥様にとってどの程度の量なのか。人によっては大したことないし、人によっては大変な量になる。
「神原、君が妻にこんなに飲ませたのか? 妻は、決して酒には強くない。いつのまに、こんなに……」
常務が慌てふためく。
そうか、奥様はあまりお酒は強くないのか。ということは、やはりもう、少し酔われている――。
私は、しめしめとほくそ笑む。
「創介さん、神原さんを怒らないでください。私が美味しくて飲んでしまったんで」
「いえ、私が。つい、楽しくなって奥様にもお勧めしてしまいました」
ほろ酔い女子二人が庇い合う。
そんな姿を見て、榊常務が溜息を吐いた。
「もういい」
常務が額に手をやる。そんな”困ったポーズ”もどことなくセクシー。
なんてことはどうでもよくて、広報誌の最大の目玉の記事を奥様に指示した。