雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「見てください、このあたり」
「ここですか?」
奥様の瞳が私の指を追う。
「はい、そうです!」
ここは絶対に、奥様にこの場で読んでもらいたい。
――奥様のどんなところを一番可愛いと思いますか?
(榊常務)私にとって、妻は、その存在自体が可愛いと言うか、彼女のすることは何でも可愛いと思う。笑っていても怒っていても、黙っていても話していても、どんな姿も可愛い。そうだな、”私の趣味は妻だ”と言ってもいい。
その綺麗な瞳が文字を追う。そして、見る見る頬が、いや、耳までもが赤くなって行く。
「あ、あの、これ……っ」
奥様が俯く。
「もう、知ったことか」
常務が口元を手で覆い、半ば自棄のようにそう吐き捨てた。
「こんなこと言われたら、最高に嬉しいですよね?」
「……すごく、恥ずかしいですけど、でも……それ以上にとても嬉しいです。そんな風に思ってくれて、ありがとうございます」
奥様は顔も首も耳も真っ赤にして常務に小さく頭を下げて。
「べ、別に。いつも思っていることを言ったまでだ」
なんて言って、額の汗を拭っている。
なんだー! この二人の可愛さは、一体何なのだ――!
世界中に向かって叫びたくなった。