雪降る夜はあなたに会いたい 【下】


「お休みのところお時間をいただき、ありがとうございます」

いつも私たち家族が過ごしている和室に創介さんがいる。その隣に私が座り、向かい側に母と優太が座っていた。

なんとも言えない緊張感が、この庶民的雰囲気の溢れた和室に立ち込めている。

創介さんがいるだけで、いつも以上に狭く感じた。

「雪野の母です。隣にいますのが、雪野の弟の優太です」

母がそう紹介すると、「どうも」と硬い表情で優太がほんのわずか頭を下げる。

「初めまして、榊創介と申します」

創介さんを見つめる母の目は強いもので。優太も、怯まないようにと必死に虚勢を張っているように見えた。

 最初からこんな雰囲気でどうなるのか。向かいに座る母と優太の顔ばかり見てしまう。

「雪野さんとのことでお願いがあり、参りました」

母も弟も分かっているとは言え、創介さんの言葉により気を張り詰めているのが分かる。

特に、母は――。

「ひたむきで心優しく芯が強いそんな雪野さんに惹かれ、この先共に生きて行きたいと強く思うようになりました。人生をかけて雪野さんを幸せにします。どうか、雪野さんとの結婚をお許しください」

創介さんが座卓から少し後ろへ下がり、深く頭を垂れる。その姿を見て、私もすぐに同じように頭を下げた。

「私も創介さんと一緒に生きて行きたいって思ってる。結婚を認めてください」

ただひたすらに母の声が発せられるのを待つ。その沈黙が異様に長く感じられた。

「――分かりました」
「お母さんっ」
「ありがとうございます――」

母の言葉に、私と創介さんが一斉に顔を上げると、間髪入れずに母の声が飛んで来た。

「榊さんのご両親は、こんな風にすぐに了承されましたか?」

え――?

顔を上げて見つめた母の顔は、酷く険しい顔をしていた。決して結婚を喜んでくれている表情ではない。笑顔になりかけた表情はすぐに引き戻される。創介さんも、困惑した様子で母を見ていた。

「雪野と結婚したいとご自分のご両親にお話された時、喜んでくださいましたか?」

話し方は落ち着いている。でも、それは明らかに詰問だった。

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