主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
そして、こちらは雲英━━━━━━

一通りの家事が終わり、昼食をとっていた。

量は多めだが紅葉と同じ内容の弁当を、紅葉と一緒に食べている気分で食べる。
雲英は、紅葉のことを考えない瞬間は一切ないのだ。


そこに、呼び鈴が鳴り響いた。
雲英はため息をつき、インターフォンへ向かう。

「なんだ?」
『お疲れ様!』

「疲れてない。
それに、今は昼食中だ。
また、改めて来いよ」

『えー!入れてよぉー
お嬢様に言いつけるよ?』

「は?」

『おっ、怖っ!(笑)
いいから、入れて?
お嬢様に渡す物もあるし』

「………わかった」

エントランスのオートロックを開ける。
しばらくして、また呼び鈴が鳴り、玄関の鍵を開けた。
「ありがと!」

更井(さらい) 亞嵐(あらん)
雲英の従兄弟で、歳は同い年。

雲英の父親の妹の子だ。
空神一族の使用人は、あくまでも甲斐一族。

亞嵐の母親は更井家に嫁いだため、亞嵐は直接は関係ない。
しかし、空神一族に頭は上がらない。

亞嵐の父親は、空神の子会社で働いているから。
そして亞嵐も、そこの社員だ。

「亞嵐、仕事は?」

「今日は、半休!」

「半休?
そんなことしないで、働け!
紅葉様なんか、時々家にまで持って帰り仕事をなさってるのに」

「はぁー、相変わらずお嬢様中心なんだから!
それに!俺は、ここんとこずーっと残業続きだったの!」

「は?残業するような仕事の仕方をするお前が、要領が悪いんだ!」

「はいはい…
………ったく…何を言っても、否定すんだから!」

「そんなことより、紅葉様へ渡す物とやらを早く寄越せ!」

「………はぁ…これ!
今日着ていく、ドレス」

「あぁ。
━━━━━━ん?これ…背中開きすぎだろ!」

「そんなの知らねぇよ。
お袋に渡されたんだから!」

「ダメだ。
さすがにこんなの……」

「でも、これ…お嬢様がデザインしたんだろ?」

「そうだが……
だからって、こんなのダメだ!!」

「でもよ。
そんなこと言ったら、お嬢様傷つくぞ?」

「わかってる」
すると雲英はスマホを操作し、電話をかけ始めた。
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