主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
「━━━━紅葉様、どうかされました?」

車に乗り込み、運転しながら雲英が声をかける。

「ううん」
(聞けるわけがない。
というか、聞きたくない…!)

「…………そうですか。
あ、パーティーのドレスですが、亞嵐が持ってきてくれましたよ!」

「そう。間に合ったのね」

「はい。
それで……誠に勝手ながら、ドレスの上に羽織るストールをご用意させていただきました」

「え?」

「いくら暖かくなってきたとはいっても、まだ夜は冷えますので……」
最もらしい言葉を並べる、雲英。

大切な紅葉様の素肌を、俺以外に見せてたまるか!
そんな気持ちがこもっていた。


「え?あ、うん。
…………あ、ドレス、どうだった?」

「え?」

「見たんでしょ?ドレス」

「もちろん!
とても可愛らしくて、素敵でしたよ!
紅葉様にお似合いです!」

「良かった!」
紅葉からすれば、雲英からの“素敵”という言葉がもらえれば問題ない。

嬉しそうに微笑んだ。


自宅マンションに帰りつき、早速着替える。
「━━━━どう?」

着替えた紅葉が、くるっと回り見せてきた。

「……//////綺麗だ…/////」

「ん?何?聞こえな━━━━━ンンン…」
聞き取れなくて聞き返す紅葉の言葉ごと塞いだ。

「んはぁ…紅葉…さ…も…一回……」
口唇を離し、口元で呟く。

「はぁ…待っ…まだ、感想…聞いてな……んんっ……!?」

「ダメ…紅葉様……口唇…離さないで……?」
「でも苦し……」

あの熱った表情。
甘い声……

されるがまま紅葉は、雲英のキスにしがみついていた。



「━━━━すみません…また、興奮してしまいました……」
シュンと落ち込んだように謝罪してくる、雲英。

(謝んなくてもいいのに……)

別に、嫌じゃない。
人前でとかは嫌だが、二人っきりの時は構わない。

雲英になら、何をされても………


ポンポンと頭を撫でる紅葉。
「紅葉様?」

「甲斐、可愛い!」

「は?」

「行こ?
早く行かないと!」

「………」

踵を返す紅葉。
雲英は、素早く紅葉の手を握り引き寄せた。

そのまま、また口唇を奪い貪った。

「んぁ…可愛いのは……紅葉様ですよ。
ドレスも、とてもよくお似合いです!
こんな表情(かお)、僕以外には見せないでくださいね!」

そう言って口唇をなぞる、雲英だった。
< 16 / 99 >

この作品をシェア

pagetop